自動車整備士をしていても考えさせられる
エンジン始動後の暖機・・・
暖機時間中は燃料が必要となるので「
燃費向上には適してはいません」が、
暖機をせずに運転することで「
オイル漏れ」等の不具合が発せするのであれば、それは「維持費
節約」にはなりません。
オイル漏れ修理は暖機に必要なガソリン代より高くなります。
しかし朝の忙しい時に5分も10分も暖機をするというのも大変です。
しかも暖機をしていないからといって「エンジンが壊れた」「エンジンからオイル漏れが発生した」とは聞いたことがありませんし、他の車と比較検討しようにもそもそもドライバーの運転方法が違うため参考にはなりません。
下記に「エンジン暖機による効果」と「暖機必要性への疑問」を記載しておくので、ここは記載内容から各々のドライバーがエンジン始動後に暖機が必要か判断することが得策かもしれません。
また、私なりの「暖機と暖機運転」も記載しておきます。
<エンジン暖機による効果>
エンジンの潤滑に使用しているエンジンオイルは、冷えている状態(暖気前)では粘度が高い(硬い)状態にあります。
エンジンを始動すると、どんなにオイル粘度が高い状態であってもオイルポンプがエンジンオイルを強制的にエンジン内部の油路(オイルが通る道)へと圧送します。
硬いままのエンジンオイルは油路に強い力(負担)をかけつつも圧送され、エンジンオイルの仕事である金属同士の隙間を埋めていきます。
エンジン冷間時のまま運転を始めることでエンジン回転数が上がり、更に多くのエンジンオイルが圧送され、更に強い力(負荷)が油路にかかります。
エンジンオイルが漏れるのを防いでいるオイルシール等はその構造から力(負荷)に弱く、油圧が高くなることによってオイル漏れを発生させる原因になりかねません。
特に
ターボ車は普通車と比べ油路が多く、オイル漏れ等の不具合も多く発生する確率が上がります。
エンジン始動後の暖機は、上記の様な事を防ぐために低回転中の油路への負荷が少ない数分間にエンジンオイルを暖め粘度を低く(柔らかく)する効果があるため、暖気の必要性が問われています。
<潤滑油切れ(オイル切れ)を防ぐ>
先ほどにもあったようにエンジンの部品は金属同士でできており、これらが高速で擦れる摩擦で「熱」と「磨耗」が発生してしまいます。
これを防ぐために金属同士の間にエンジンオイルが薄い油膜となりエンジン自体を保護しているのですが、長期間エンジンを始動していないとエンジンオイルの油膜がきれている可能性があるので、暖機によってエンジンオイルをエンジン内部に圧送(潤滑)させ、エンジンオイルの油膜を作り、金属同士のキズや磨耗を防ぐことができます。
<暖機必要性への疑問>
エンジン始動後の暖機で暖めることができるのは「エンジン(エンジンオイル)」だけであって、その他の駆動系である「トランスミッション(
ATF)」や「
ディファレンシャル(デフオイル)」は動いていないので暖機はできていません。
(MT車、一部のAT車)
そのことに気づかず暖気したからといって直後に激しい運転をすれば、トランスミッションやディファレンシャルを痛めることになります。
エンジンオイルを温めるといってもほんの数分で暖めることができる温度はそれほど高くはありません。
仮に水温計が上がりきるまで暖機をしたとしても完全に暖機ができているのはエンジンだけであって、トランスミッションの暖機は「不完全」な状態ですし、ディファレンシャル(FR)は暖機前と暖気後の「温度に変化」はありません。
潤滑油切れ(オイル切れ)でエンジンが傷まないようにエンジンオイルがエンジン全体に送るまで待つ必要があるという意見もありますが、1ヶ月以上エンジンを始動ていない状況ならいざ知らず、1週間程度でエンジンオイルの油膜がきれるという考えも微妙な気がします。
それに加え数分間の暖機が必要ともありますが、エンジンオイルがエンジン全体に回るのに必要な時間は「数秒から数十秒」程度でしょう。
<理想的な暖機と暖機運転>
エンジン始動後の暖気の効果には疑問が残るものの、まったく暖気をしないのも車のことを考えるとオススメできることではありません。
そこで、私が行っている簡単でオススメな「暖気」と「暖気運転」を紹介します。
・エンジン始動後、回転数が落ち着く間の「30秒〜1分程度」暖機をする。
・水温計が通常の位置まで上昇するまでの間、必要以上に
アクセルを踏み込まないように注意し「低回転での運転」を心がける。
・
シフトチェンジによる
エンジンブレーキなど、暖気前はトランスミッション等に負荷がかかるような運転は控える。
「暖機」と「暖機運転」が必要かどうか(必要性)はわかりませんが、人間も目覚めてすぐに走り出したら体によくないのは確かです。
体を慣らすためにちょっと歩いてから走り出す方がいいので、車を大切にしたいのであれば適度な暖機と暖機運転は必要だとは思います。
(余談※1)
(注意※1)