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ブレーキパッド点検・交換
ブレーキパッド交換となると、車の三大要素「走る・曲がる・止まる」の「止まる」にあたることから、もし作業ミスなどをしてしまうと重大な事故につながりかねません。
安全と保証のためには最寄りの整備工場に依頼する方が安心です。


ディスクブレーキの構造は車種によって多少異なり、簡単でもうしわけないですが、ブレーキに使用しているブレーキピストンの数が「1〜4個」と異なることがあります。
ブレーキパッド交換の際は、事前に調べておきましょう。
(余談※1)




<準備・必要なもの>
・軍手(手を汚さないため)
タイヤを外す工具(ジャッキ、ハブナットレンチ)
・12mm、14mmのメガネスパナ(ブレーキキャリパーのボルト取り外しに使用)
・12mm、14mmのオープンスパナ(ブレーキキャリパーの構造によっては使用)
・ブレーキピストンを縮めるSST(写真を参考)、もしくはウォーターポンププライヤー、マイナスドライバー(大)
・新品のブレーキパッド(車種に合った物)
ブレーキフルードを吸いだす工具(フルードの量で必要ない場合もあり)
・紙ヤスリ


-パンダジャッキ
(パンダジャッキを使用する場合は、安全のための作業工程が増えます)




<作業手順>
1、車をジャッキアップ可能なポイント、平坦で路面に隙間がないコンクリート詰めの場所に移動させます。
(注意※1)


2、シフトレバーを「Pレンジ」にサイドブレーキをかけます。
後輪後ろに輪止めを設置します。
(輪止めがなければ何か代用品を使用してください)


3、タイヤを取り外すための下準備。
ジャッキアップしてしまうとハブボルトを取り外すのに正規の手順を踏むことができなくなることに加えて、取り外しが困難となるのでジャッキアップ前に行います。

-ホイールキャップが付いていればハブナットレンチの反対側の端、もしくはマイナスドライバー(大)を使い取り外します。
(勢いをつけて引っ張ることで取り外すこともできます)

ハブナットレンチを使い、ハブナットを対角方向に1/2回転ずつ緩めます。

ジャッキポイント
4、ジャッキアップ。
車両のジャッキアップポイント(車の取扱説明書に記載されている位置)にジャッキをかけて、車をジャッキアップしていきます。
(基本、4輪ジャッキアップ、フロント側からです)
(写真、矢印ジャッキアップポイント、その他の赤リジットラックポイント)
駄目なジャッキポイント
-油圧フロアジャッキを使用する方は、リジットラック(通称、うま)を必ず使用してください。
※フロアジャッキだけで車を保持するのは大変危険です。
(余談※2)

(写真は、ジャッキをかけてはいけないポイントをシールで注意書き)

-パンダグラフジャッキを使用する方は必ず外したタイヤを車体の下に入れ、車を少しジャッキダウンさせタイヤの上に車体が軽く乗るようにしてください。
これで少しジャッキが前後左右の揺れに強くなります。


5、タイヤ取り外し。
タイヤの落下を太ももで支えながらハブボルトを外していきます。

作業工程「3」でハブボルトを緩めているので手で取り外しが可能です。
それでも取り外しが困難な場合、ハブナットレンチで軽く叩くようにして緩めていってください。

※必ず外したタイヤは車の下に入れてください。
(注意※2)

ブレーキキャリパー
6、12mm、14mmのメガネレンチを使用し、ブレーキキャリパーのボルトを回転方向に注意しながら反時計回りに回し取り外します。
(ブレーキキャリパーの構造によって多少異なります)

たいていの車両は、ボルト1本(もしくはピン2本)を取り外すことでブレーキパッドを取り出せます。

この時のトルク(力)を感覚で覚えておきます。
(固着していることもあるので、その場合は参考になりません)


7、ブレーキキャリパーを持ち上げ、ブレーキパッドを取り外します。


8、ブレーキパッド残量点検。
新品のブレーキパッドが「10〜15mm」程度。
車検で交換となるのが、だいたい「5mm以下」です。

個人で点検・交換ができるのであれば走行距離と運転方法に応じてブレーキパッドは減っていくので、自分の運転でブレーキパッドがどのぐらいのペースで減っていくのかを把握すれば「2、3mm」と限界近くまで使用できます。

ブレーキパッド鳴き予防
(9)ブレーキパッド交換。
新品のブレーキパッド表面(パッド面)を軽く紙ヤスリで削り、パッド面の角を丸く削ります。
(初期制動力(ブレーキ力)の確保と、ブレーキ鳴き防止のため)

新品のブレーキパッドにグリスが入っていたらパッド押さえ板裏側に塗布し、古いシムを再使用し取り付けます。
またブレーキキャリパーが、ブレーキパッドを保持するための面(摺動部)にグリス塗布します。


(10)ブレーキフルード抜き取り。
ブレーキパッドを交換する場合、ブレーキピストンを縮める(戻す)ことになるのでブレーキフルードがリザーバータンクへと戻ることになります。
この時リザーバータンク内のブレーキフルードが多いと溢れてしまうので、工具を使用しブレーキフルードを抜き取る必要があります。
(注意※3)

リザーバータンク内のブレーキフルードが規定内より半分以下であれば、抜き取る必要がないこともあります。
ブレーキピストン戻し

(11)ブレーキピストンを縮めます。
・特殊工具(SST)を使用して、ブレーキピストンを戻します。
(参考写真、右)

・特殊工具がない場合、ウォーターポンププライヤーを使用してブレーキピストンを戻します。
工具でブレーキピストン戻し(ウォーターポンププライヤーを使用した方法でブレーキピストンを戻そうとすると、ブレーキピストンがキズ付きます)
(参考写真、右)

・特殊工具がない場合、マイナスドライバー(大)を使用してブレーキピストンを戻します。
(マイナスドライバーを使用した方法でブレーキピストンを戻そうとすると、ブレーキローター、ブレーキピストンをキズ付ける可能性があります)マイナスドライバーを使用したブレーキピストン戻しマイナスドライバーでブレーキピストン戻し









パッドウエアインジケーター
12、ブレーキパッド取り付け。
パッドウェアインジケーターの位置に注意しながら、ブレーキパッドを元の位置に取り付けます。

パッドウェアインジケーターの取り付け位置は「ブレーキピストン側」、なおかつ「前進方向」でブレーキパッドが最初に当たる面となります。


13、12mm、14mmのメガネレンチを使用し、ブレーキキャリパーのボルトを回転方向に注意しながら時計回りに回し締めつけます。

トルク(力)は、取り外した時と同等の締め具合になるように締めつけますが、指の第二関節付近で工具を持ち、指4本の力で締めれるぐらいだと思います。


14、ブレーキフルードの量点検。
4輪全てがタイヤを取り外した時の状態に戻ったことを確認したら、ブレーキペダルを数回踏み、ブレーキフルードの量が規定内に入っているかを確認します。
(ブレーキパッドを交換した場合は「FULL」ライン付近)
(注意※4)


15、タイヤ取り付け。
ブレーキキャリパーのボルトが締まっているか再度確認した後、タイヤを仮付けします。
できるだけタイヤをセンターに合わせ手でハブナットを締めこめば、仮付け終了です。


16、ジャッキダウン。
ジャッキアップとは全く逆の手順で、ジャッキダウンを行います。


17、ハブナット本締め。
自重を手に乗せる感じで、ハブナットを対角に締めていきます。


18、再度ブレーキフルードの量を確認して、ボンネットを閉じれば終了です。




<点検時期>
1年に一度の定期点検をお勧めします。
ブレーキパッドの消耗具合を計算しての交換時期。

私の経験では、約「3〜5万キロの交換」が多いです。



余談
※1、ブレーキピストンの数は市販車の多くは1個、高級車やスポーツカーには2〜4個使用されてることが多いのです。
1個しか使用していない車の数が圧倒的に多いことから、皆さんが整備する車のブレーキピストンは1個の場合が多いでしょう。

※2、外したタイヤを車の下にも入れずフロアジャッキだけで車を保持して、車の下に潜って作業している風景を素人型カーショーなどで見かけることがあります。
整備士免許を持っている人からすると「車好きの素人」「死にたいのか」などと思います。
そもそもその様な作業をする素人が、油圧ジャッキのメンテナンスを行っているとは思えません。
カッコイイと思っているかもしれませんが、そのような姿を見ると「お金だけのカーショップ車」だと思われてしまうので、整備もできる姿を見せたければ基本の安全をきちんと守りましょう。
注意
※1、月極め駐車場の多くは石を含んだアスファルトが使用されています。
石を含んだアスファルトは車の重さに耐えきれず石が崩れることでジャッキがずれたり、車が倒れる可能性もあるので、このような場所での作業では車の下に潜るような作業は控えてください。
特にパンダジャッキでの作業は大変危険です。

※2、もし車の下敷きなった時にタイヤが致命傷を防ぐ効果があるのと、再度車をジャッキアップできるようにです。
ジャッキを入れる隙間がなくなった車を持ち上げるのは困難を極めます。

※3、こぼしたブレーキフルードは必ず洗い流してください。
変色したり、塗装がはげたりします。

※4、必ずブレーキキャリパー、ドラムブレーキなどが閉じている(初期状態である)ことを確認してからブレーキペダルを踏んでください。
どこかひとつでも開いていると、ブレーキピストンなどが飛び出してきます。

※、少しでも難しいと感じたら、車整備に詳しい人、もしくは、専門の人と一緒に作業を行うようにしてください。
「作業ミス」「トラブル」「事故」等の責任は一切当サイトは請け負いません。
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