エンジン冷却水(LLC)交換は、エンジンルーム内に手を入れて作業をするので、各部品の詰まり具合によって作業レベルが上下します。
作業ミス等で車がオーバーヒートした場合、その修理代金が高額になることからあまりオススメできる作業ではありません。
また廃液処理などの手間を考えると、最寄りの整備工場に依頼する方が断然楽であることは間違いありません。
(余談※1)
<エンジン冷却水(LLC)交換方法>
自動車整備士が行うエンジン冷却水(LLC)交換は、大まかに分けて2パターンあります。
多くの自動車整備士がエンジン冷却水(LLC)交換で使用する方法で、
ラジエーターにあるドレーンコックからLLCを抜き取り、再度ラジエーターへとLLCを補充します。
しかしこの方法では車に使用されているエンジン冷却水(LLC)、全体の約「1/4〜1/3」程度しか交換できません。
残りの古いLLCがエンジン内部に残っていることから新・旧のLLCが混ざり合い、エンジン冷却水(LLC)の役割である「不凍液」「防腐液」としての効果が薄れてしまいます。
しかしこの交換方法は「作業が簡単」で「短時間」でできることから、多くの自動車整備士がこの方法でLLCを交換しています。
ラジエーターからのLLC交換ではなく、エンジン内部へとLLCが通る水路を切り離し、そこから一度水を送り込むことによって古いLLCを完全に洗い流し交換します。
この方法では新・旧LLCが混ざり合うことがなく、きれいにエンジン冷却水(LLC)を交換できます。
しかし作業に手間がかかることから、自動車整備士からは好まれていません。
ラジエーターのキャップ口にLLCチェンジャーを取り付け、LLCが通る水路に圧をかけながら新しいLLCを送り込み、古いLLCと交換ができる機械です。
しかし機械作業という「信頼のなさ」と「作業時間が長い」ことから、たとえ整備工場にこの機械があったとしても、あまり使用されていません。
<ラジエータードレーンコックからのLLC交換>
<準備・必要なもの>
・軍手(手を汚さないため)
・新品のLLC(車両に必要な容量、目安として約2リットル)
・新品のOリング(ラジエータードレーンコック)
・水道水と水道のホース
・ジョーゴ(LLCを入れるのに使用)
・
オイル受け皿、もしくはプラスチック容器
(高さ150mm程度、400mm×500mmぐらい、容量5リットル以上が望ましい)
-プライヤー(ドレーンコックが固い場合に使用します)
-ピックツール、もしくは、マイナスドライバー(小)(Oリング取り外しに使用)
-ジョーゴの代用品としてペットボトルを半分に切り、口にビニールテープをラジエーターキャップの太さに巻くと使いやすいです。
<作業手順>
1、イグニッションキーを回し「ON」もしくはエンジンを始動し、暖房を最大にして車のヒーターバルブを開かせます。
キーを「OFF」にします。
2、ボンネットを開け、エンジンルームを開きます。
3、エンジンルーム内からラジエーターキャップ(写真の赤丸)を探し、少し押しながら反時計回りに回し取り外します。
(注意※1)
4、ラジエーターに取り付けてあるドレーンコック(写真の赤丸)を探します。
(ラジエーターの真下に、プラスチックネジとして取り付けてある車種もあります)
5、ラジエータードレーンコックの真下にオイル受け皿をセットします。
(LLC抜け穴を確認してください)
またドレーンコックからアンダーカバーへと多少漏れるので、アンダーカバーからのLLC落下地点にも、オイル受け皿が届くようにセットしてください。
6、ドレーンコックを反時計回りに2、3回転緩めます。
(回転方向に注意)
-手で緩めれないことが多いので、上手くプライヤーを使い緩めます。
(7)ここで「ラジエータードレーンコックからLLC交換」を数回繰り返し、エンジン冷却水(LLC)を綺麗にするという方法もあります。
-ドレーンコックを締める
-ラジエーターに水を入れる
-エア抜き工程を途中まで行う(エア抜き工程の注意を読んでください)
-再度ドレーンコックを緩める
(これを2、3回繰り返す)
8、ドレーンコックを取り外し、Oリングを交換します。
-上手く取り外しができなければ、ピックツールを使用します。
9、ドレーンコックを取り付け締めつけます。
(プラスチック樹脂なので指2本で軽く締める程度)
10、オイル受け皿の移動。
LLC注入、エア抜き工程でLLCが噴きこぼれるので、アンダーカバーからのLLC落下地点を予測してオイル受け皿を移動させます。
11、新品のエンジン冷却水(LLC)注入。
ジョーゴを使いLLCを注入していきます。
(上手くエアーが抜けずすぐに噴きこぼれるラジエーターもあります)
(余談※2)
12、<ラジエーターエア抜き>工程へ
<エンジン冷却水(LLC)水路からのLLC交換>
<準備・必要なもの>
・軍手(手を汚さないため)
・新品のLLC(車両に必要な容量、目安として約2リットル)
・新品のOリング(ラジエータードレーンコック)
・水(水道水でもOKです)
・ジョーゴ(LLCを入れるのに使用)
・オイル受け皿、もしくはプラスチック容器
(高さ150mm程度、容量5リットル以上が望ましい)
・ピックツール(ヒーターホース取り外しと、Oリング取り外しに使用)
・ウォーターポンププライヤー(ホースバンド取り外しに使用)
-プライヤー(ドレーンコックが固い場合に使用します)
-ジョーゴの代用品としてペットボトルを半分に切り、口にビニールテープをラジエーターキャップの太さに巻くと使いやすいです。
<作業手順>
1、イグニッションキーを回し「ON」もしくはエンジンを始動し、暖房を最大にして車のヒーターバルブを開かせます。
キーをOFFします。
2、ボンネットを開け、エンジンルームを開きます。
3、エンジンルーム内から、車内へと向かうLLC水路であるゴムホース(ヒーターホース)を探します。
(写真赤丸を参考)
水撒き用のホースよりひと回り太いホースで、入口出口と2本並んでいます。
このゴムホースのエンジン側を取り外すことになります。
(車内側でも良いのですが、中が真鍮やプラスチックだったりして強度がないので、不安な方はエンジン側をオススメします)
4、オイル受け皿の移動。
水を送り込み古いLLCを抜くことになるので、容量の大きいオイル受け皿を用意します。
5、ヒーターホース取り外し。
工具を使用し、ヒーターホース出入り口どちらかのホースバンドを(写真では左に)2、3cmほど移動せさせます。
(出入り口、容易に作業が行える方でかまいません)
ヒーターホースを軽く回転させながら引き抜き取り外します。
(ヒーターホースの口が固着していた場合、ピックツールを使いヒーターホースを傷つけないように固着している面を浮かせます)
※ホース内にLLCが入っていることを確認します。
(ヒーターホースではない場合、それを元通りに戻してください)
6、ヒーターホースに水道のホースを取り付けます。
(オスメスどちらでも構いません。おそらくメスの方がしっくりはまるはずです)
7、排出される古いLLCの落下地点にオイル受け皿を移動させます。
8、LLC抜き替え。
水道の蛇口を徐々に開け、古いLLCを洗い出します。
(水を上手く送り込めない場合は、ラジエーターキャップを開けてください)
排出されるLLCの色が綺麗になったら、ラジエータードレーンコックを「ラジエーターのドレーンコックからのLLC交換」⇒作業工程「6」を参考に取り外します。
ラジエーターキャップを少し押しながら反時計回りに回し取り外します。
ヒーターホースの水道ホースを取り付けていない方の口を押さえたりして、水が満遍なくいきわたるように水路を切り替えます。
9、ヒーターホース取り付け。
「ヒーターホース」「ラジエーターキャップ」「ドレーンコック」から排出される水が綺麗になったことを確認します。
水道ホースを取り外し、ヒーターホースを元の位置に素早く取り付けます。
(エア抜きがなかなかできなくなるので、この作業はできるだけ短時間で行ってください)
水道の蛇口を締めます。
10、ホースバンド取り付け。
工具を使用しホースバンドが取り付けてあった後(くぼみ)が残っているので、それに合うように取り付けます。
(注意※2)
11、ドレーンコックを取り外し、Oリングを交換します。
-上手く取り外しができなければ、ピックツールを使用します。
12、ドレーンコックを取り付け締めつけます。
(プラスチック樹脂なので指2本で軽く締める程度)
13、オイル受け皿の移動。
LLC注入、エア抜き工程でLLCが噴きこぼれるので、アンダーカバーからのLLC落下地点を予測してオイル受け皿を移動させます。
オイル受け皿がいっぱいになっていたら適切な方法で古いLLCを処理します。
14、新品のエンジン冷却水(LLC)注入。
ラジエーター内の水が抜けていると思うので、ジョーゴを使いLLCを注入していきます。
(上手くエアーが抜けず、すぐに噴きこぼれるラジエーターもあります)
15、<ラジエーターエア抜き>工程へ
<ラジエーターエア抜き工程>
車種によってはエア抜きの方向が異なることがあります。
エンジンルーム、ボンネット裏に説明書き(注意書き)がないか確認して、以下のエア抜き方法を試してください。
<作業手順>
1、エンジン冷却水(LLC)リザーバータンク内を清掃し、新品のLLCを「FULL」ラインより、2、3cm(親指一個分)多く入れておきます。
(濃度は50%より少し濃いめにしておくことをオススメします)
2、ラジエーター内のLLCが満杯になっていることを確認します。
3、エンジンを始動し、水温計をチェックしながら5〜10分程度ラジエーター内のLLCを補充していき、エア抜きを行います。
(ラジエーター内のLLC噴き出してきたらエンジンを止め次の工程へ)
(注意※3)
4、エンジンを停止し、最後にラジエーター内のLLCを確認した後、ラジエーターキャップを締めます。
5、再度エンジンを始動し、水温計に注意しながらエンジンを3000回転付近にキープします。
水温計の針が普段と変わらない位置にあり、エアコンの噴き出し口から暖房が出てくるようになれば、エア抜き終了です。
6、確認として、水温計に注意しながら近所を2、3週試運転します。
7、エンジン停止後、LLCリザーバータンクを確認し、先ほどの様に少し多めにLLCを補充しておきます。
8、次に車を使用する前と後にLLCリザーバータンクの量を確認してください。
<点検時期>
・新車であれば3年。
・初回車検以降は、24ヶ月法定点検ごとに交換してください。
・スーパーLLCなどはメーカーによって多少異なりますが、「10年10万キロ以上」その性能が失われません。
(個人的な意見としては、3〜5年の間に交換するといいかもしれません)
(また途中からスーパーLLCに交換し場合、その効果は得られないと思っていた方がいいと思います)
もしLLC交換しないなどをすると、「不凍液」「防腐液」の効果が薄れ、LLC水路内が錆びたり、LLCが腐ったりすることがあります。