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タイヤローテーション作業を誤魔化し手抜き
車のタイヤの溝は4本とも一定のスピードで磨耗していくのではなく、駆動方式や運転方法よって「前輪タイヤの磨耗が早かったり」、「後輪のタイヤが早かったり」とバラバラです。
(注意※1)



<駆動方式によるタイヤの減り具合>
・FF車 (フロントエンジン・フロント駆動)
FF車(前輪駆動車)の前輪タイヤは後輪タイヤに比べ、約2倍ぐらいのスピードで減りが早いです。

その理由として、FF車は前輪タイヤを駆動輪として回転させているため「発進」(停止状態から路面とタイヤとの摩擦を利用して車を前に進ませる)に前輪タイヤを使用しているからです。

また「加速」(アクセルを踏み込んでの大きな加速)時には、車はフロントボディーが上に浮き上がろうとします。
このときに「フロントタイヤと路面との摩擦力が減り」空転とまではいきませんが、滑りに近い状態になるからです。

なおかつ「ハンドル操作」時にはエンジンの重さが前輪のタイヤに加わり、ハンドル操作でタイヤを左右に動かすとタイヤに大きな負担をかけるからです。

「後輪」はただ回転しているだけで、ブレーキ力(制動力)も電子制御ブレーキシステムが作動していない限りは「前輪のブレーキ力の方が強い」です。
(余談※1)



・FR車 (フロントエンジン・リア駆動)
FR車(後輪駆動車)のタイヤは、ある程度前後輪は均等に磨耗していきます。

後輪タイヤの減りが早ければ、停止状態からの発進時にアクセルを踏み込みすぎなどが原因ではないでしょうか。

前輪タイヤの減りが早ければ、前輪に負荷をかけるようなブレーキング、無駄なハンドル操作、ハンドルの切りすぎなどが上げられます。




<左右輪でタイヤの磨耗スピードに差があると>
基本的には左右輪でタイヤの磨耗スピードに大きな差ができることはありません。
しかし数々の整備でアライメントがズレたり、カーブを曲がるときのスピード差にドライバー特有の癖があったりします。
(余談※2)

左右タイヤの磨耗に差があり「足回り」「エンジン周り」の重整備経験があったら、一度アライメント調整をすることをオススメします。

アライメントがズレているとタイヤの偏磨耗の原因になりますし、タイヤ交換のローテーションも早くなります。
最悪、燃費が悪くなる原因になることもあります。




<タイヤローテーションの必要性>
「消耗したタイヤだけ交換し続ければタイヤローテーションの必要はない」と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、タイヤはゴムでできているため月日が経つと紫外線などの影響から劣化していきます。
タイヤ亀裂
また消耗したタイヤだけを交換する方法を続けていると、古くなったタイヤの方に亀裂が入ったりして危険です。

一度タイヤに亀裂が入ると、たとえタイヤ溝が残っていたとしても交換を勧められ、もしくは交換が必要となったりします。

タイヤローテーションをしていれば引き続き使えたかもしれない溝があるタイヤを交換していては、大きな損をしてしまいます。


上記の理由から、タイヤローテーションによって前後輪のタイヤを入れ替えタイヤ溝の減りをできるだけ均等にして、タイヤ4本の新品から交換までの使用期間を長く、そして長すぎないようにしているのです。




<タイヤローテーション組み換え方法>
前後タイヤの入れ替えとなるタイヤローテーションは、駆動方式によってタイヤの入れ替え位置が変わってきます。

タイヤの回転方向が決まっている場合には駆動方式による組み換え方法はあてはまらず、前後タイヤの入れ替えとなります。
(注意※2)


・FF車
フロントタイヤ ⇒ リアタイヤ
リアタイヤ ⇒ 左右入れ替え ⇒ フロントタイヤ


・FR車、4WD車
フロントタイヤ ⇒ 左右入れ替え ⇒ リアタイヤ
リアタイヤ ⇒ フロントタイヤ


・5本タイヤ (スペアタイヤが他の4本と同じ)
右フロントタイヤ ⇒ スペアタイヤ
左フロントタイヤ ⇒ 右リアタイヤ
右リアタイヤ ⇒ 右フロントタイヤ
左リアタイヤ ⇒ 左フロントタイヤ
スペアタイヤ ⇒ 左リアタイヤ




<タイヤローテーションでの手抜き整備>
・ホイールバランス調整をしない
前後のタイヤの位置を組み替えるタイヤローテーションは、タイヤの磨耗と共に徐々にホイールバランスが狂ってきます。
そのためハンドルの振れなどの不具合となりやすい前輪タイヤは、タイヤローテーション後にはホイールバランス調整をしなくてはいけません。

しかし「作業時間がない」「ホイールバランサーが遠い」「ホイールバランサーが混みあっている」「めんどくさい」などの理由から、前輪のホイールバランス調整を行わない手抜き整備士がいます。



・左右タイヤの入れ替えをしない
上記のタイヤローテーション組み替え方法にあったように、タイヤの回転方向が決まっている場合以外は、車の駆動方式によってタイヤの「左右チェンジ」を行わなければいけません。

そんな簡単な作業「左右を入れ替える理由を知らない」「めんどくさい」などといった理由から手を抜いてしまう整備士がいます。


タイヤを左右入れ替えることによって、「ハンドル操作」や「ブレーキング時」にタイヤの溝にかかっていた摩擦による負担からできる、タイヤ内部の「繊維のよじれ」「方向負担」を変える効果があると聞いています。

つまりは「タイヤを左右入れ替える」ことによって、タイヤを休ませ「長持ちさせる」効果があるということです。
(余談※3)



・タイヤ溝の数値を誤魔化して記入
半年点検、法定一年点検(12ヶ月法定点検)では、点検した際にタイヤの残り溝の数値を記入しなくてはいけません。
そしてタイヤ残り溝に前後差があったときには、タイヤローテーションをするのが基本です。

しかし、タイヤローテーション作業が発生するタイヤ溝チェックは整備士が行います。
そしてそのタイヤの残り溝から、タイヤローテーションが必要かどうか決めるのも整備士です。


タイヤ溝の数値を誤魔化し多少の誤差であれば平均化することによって、タイヤローテーションの必要はなくなります。

そして作業的にもタイヤを4輪取り外してホイールバランス調整をするのと、そうでないのとでは大きな違いがありますし、作業時間も短縮できてしまうことから「数値を誤魔化す」といった手抜きが行われるのです。


たとえタイヤ残り溝が前後同じであったとしても、タイヤを休ませるという意味ではタイヤローテーションは必要です。

法定点検などの作業後にタイヤローテーションが行われていなければ、このような手抜きが行われている可能性があります。



余談
※1、ブレーキ力が前輪の方が強いのは、前輪と後輪が同じブレーキ力だと後輪が先にロックしてしまうからです。
それはブレーキをかけた瞬間に慣性力が働き、車のボディーだけが前に押されリアボディーが浮き上がり、路面との摩擦力が減ったリアタイヤは弱いブレーキ力でも簡単にロックしてしまうからです。

※2、カーブは運転席の位置から左右で見える視界の広さが違うので、ドライバーによってはカーブへの進入速度が変わってきます。
また道路に雨水が溜まらないようにと、若干道路が傾いているのも原因の一つかと思います。

※3、昔は、タイヤローテーションで左右タイヤを入れ替えると、不具合が発生したなどの話がありますが、それは随分と昔の話で、現在はタイヤの性能も向上しているので、タイヤローテーションで左右タイヤ入れ替えても問題ありません。
注意
※1、ここでのタイヤの磨耗スピードの差は前後輪であって、左右輪ではありません。

※2、タイヤのサイズが前後で異なる場合タイヤローテーションはできません。
普通乗用車では見かけることはほとんどありませんが、一部のスポーツカー(クーペ)のリヤタイヤに太いタイヤが採用されています。

※、ここに掲載されている内容は、ごく一部の症例です。
全ての自動車整備士が、このような手抜き整備を行っているわけではありません。
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